アイコクの誇り

昭和34年、当社が自転車用部品メーカーから、より技術水準の高いオートバイ用部品メーカーに業種転換を図っている時でした。ちょうど世間は岩戸景気にわき、他社では多額の賞与(ボーナス)が支給されていましたが、取引先であった本田技研工業のスーパーカブ・ブームの影響で、設備の更新と新技術の習得にお金をかけていた当社は、どうやりくりしても賞与を捻出する余力がない状態でした。
そこで、経営者はやむを得ず銀行から借り入れて、ささやかな額の賞与を支給することにしました。当然ながら役員、管理者は支給返上です。ところがその事情を知った若い社員から「自分たちの賞与を出し合って直立ボール盤を買おう」という意見が出され、実際に自分たちの賞与を設備購入資金として拠出してくれました。
具体的には、当時の全社員150名中94名から約38万円(大卒初任給1万円以下の頃)の資金が集まり、6軸の直立ボール盤を購入、それまで6人掛かりであった孔あけ作業を1人でできるようになりました。
この社員の自発的協力が金融機関の信頼を高め、バックアップが得られる大きな力となり、スーパーカブ・ブームを乗り切る事ができ、現在の発展へと繋がりました。